『バックルームズ』感想

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怖いというより、不気味な感覚を味わう映画

『バックルームズ』は、2026年公開のアメリカのホラー映画。監督はケイン・パーソンズ、脚本はウィル・スーディック。主演はキウェテル・イジョフォー、レナーテ・レインスヴェです。

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私がこの映画を観たいと思ったきっかけは、監督のケイン・パーソンズが16歳のときに制作したYouTube動画です。初めてその動画を観たとき、「こんな動画を16歳が作ったのか」と面白く感じました。その作品が映画化されると知ったときから、ずっと楽しみにしていて、「これは絶対に映画館で観よう」と決めていました。今回は、そんな『バックルームズ』を実際に観てきた感想です。

※以下、作品についての内容に触れています。

ケイン・パーソンズの「バックルーム」

バックルームには、さまざまな作品や解釈があります。

一般的には、Level 0、Level 1……というように階層化された世界として描かれることが多いですが、ケイン・パーソンズのバックルームは階層として区切られているというよりも地続きになった世界として描かれているように感じます。

そもそもバックルームは、一人の人間が最初からすべての設定を作り上げた世界観ではありません。

そのため、作品によって設定や解釈が違う。

「この設定が好き」という人もいれば、「これは自分の知っているバックルームとは違う」と感じる人もいると思います。

そうした違いも含めて、バックルームという世界の面白いところなのかもしれません。

私は今回の映画、かなり面白かったです。

……というより、正確には、人間の深層にある「不気味だ」と感じる感覚を、映像で表現するのがとても上手い映画だと思いました。

子どもの頃に感じた「家具店の怖さ」

この映画で、私が一番不気味だと思ったシーンがあります。

それは、クラークが家を追い出され、職場の家具店で寝泊まりしていたシーンです。

広い家具店。そこに並べられた大量の家具。

そして、その空間にいるのはクラークだけ。

電気が点滅する天井。それだけなのに、ものすごく不気味でした。

そして、このシーンを観たとき、私は子どもの頃の記憶を思い出しました。

幼い頃、家具店へ行く機会が何度かありました。

1階にはたくさんの人がいて、店員さんもいる。

普通に人の気配がする場所です。

ところが、2階へ上がると、急にシンッとする空間……さっきまで人がたくさんいたはずなのに、2階には自分一人しかいない………

でも、階段の下からはまだ人の気配がたくさんする………

なのに、階段を上がった先にはベッドがひたすら並ぶ静かな空間が広がっている。

子どもの私はそれが怖くて、急いで1階へ降りて両親を探したことがあります。

映画の家具店のシーンを観たとき、その記憶と重なりました。

だからなのか、私はクラークやメアリーの前にクラーク船長のエンティティが出てきたときよりも、家具店で一人きりになっているシーンのほうが怖かったです。

だって、エンティティが出てきたら、「このあと絶対に何か起こる!」と予想できますから(笑)

「何か起こりそうなのに、何も起きない」が怖い

この映画を観ていて、私は、「何か起こりそうなのに、何も起こらない空白の時間こそが恐怖なんだ」と感じました。

誰もいない。

広すぎる。

静かすぎる。

見慣れたような場所なのに、どこかがおかしい。

でも、何がおかしいのかは分からない。

そういう時間が、少しずつ不安を大きくしていく。

「ああ、リミナルスペースとはこいいうことなのか」と、映画を観ながら少し理解できた気がします。

怖いものが突然出てくる「分かりやすい恐怖」ではなく、「何かいるかもしれない」「何か起こるかもしれない」という、自分の想像によって怖くなっていく。

バックルームの魅力は、そこにあるのかもしれません。

「怖い」より「不気味」

『バックルームズ』を観ていて強く感じたのは、「怖い」というよりも「不気味」という感覚でした。

もちろん、怖い場面もあります。

でも、それ以上に印象に残るのが、「なんか嫌だ」という感覚です。

誰もいない空間。

不自然に広い場所。

見慣れているようで、現実とは少し違う景色。

何かが出てくるわけではないのに、そこに長くいたくない。

そういう、人間が本能的に感じる「不気味さ」を映像にしているように思いました。

「犬を知らない人に犬を描かせた」

『バックルームズ』という作品を表現するなら、映画の中に出てくる、「犬を知らない人に特徴を伝えて犬を描かせた」という言葉がぴったりだと思います。

バックルームを知らない人でも、「何かがおかしい」「なんとなく不気味」「ここにはいたくない」と感じてしまう。

その正体をはっきり説明できなくても、人間の中にある「不気味だ」と感じる感覚を刺激してくる。

それが、この作品の面白さなのではないでしょうか。

バックルームにはさまざまな設定や解釈があります。

だからこそ、人によってはこの映画に対して賛否が分かれる部分もあると思います。

それでも私はケイン・パーソンズが作ったバックルームの世界を、映画館の大きなスクリーンで観られたことが嬉しかったです。

何より、16歳の少年がYouTubeに投稿した映像から始まった世界が、映画になったということ自体がすごく面白い。

そして、この映画は映画館を出たあとも少し楽しめる気がします。

映画を観終わったあと、少し暗くて、どこか非現実感のある映画館の館内を歩く。

さっきまで観ていた映画の影響なのか、いつもなら何とも思わない館内が、少しだけ違って見える。

誰がいない通路。

人の気配が少ない場所。

無機質な壁や照明。

そんなものを見ながら歩いていると、映画の余韻がまだ続いているように感じられます。

映画を観終わったはずなのに、まだ少しだけバックルームの世界にいるような感覚。

こういう余韻まで含めて楽しめるのも、この映画の面白いところだと思いました。

まとめ

バックルームズは、私にとって「怖い映画」というより、「不気味な感覚を味わう映画」でした。

エンティティが出てきて怖い、というだけではなく、何も起こらない空間や、誰もいない場所、何かがおかしいけれど何がおかしいのか分からない感覚。

そういったものが、じわじわとこちらの想像力を刺激してきます。

なので、「怖い映画が観たい」という人よりも、「不気味な感覚を味わいたい」という人にぜひ観てほしい作品です。

そして、映画を観終わったあとに映画館の中を歩きながら、「さっきの場所、ちょっとバックルームっぽかったな」なんて思ってしまう。そんな不思議な余韻まで楽しんでほしい映画でした。

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